2024年3月1日、ニカラグアがドイツに対して国際司法裁判所(ICJ)に事件を提起、仮保全措置命令も要請した。
パレスチナ被占領地(特にガザ地区)に関し、ジェノサイド条約・ジュネーブ諸条約と追加議定書、逸脱不可能な国際人道法諸原則、その他一般国際法の強行規範の違反との主張
🗞️ Proceedings instituted by the Republic of Nicaragua against the Federal Republic of Germany on 1 March 2024, Application instituting proceedings and request for the indication of provisional measures
- ニカラグアが主張する裁判所の管轄権
- ジェノサイド条約9条
- 裁判所規程36条2項に基づく強制管轄受諾宣言
- ニカラグアが裁判所に求める裁定
- ドイツは、状況を十分に認知しながら、パレスチナ人、特にガザの人々に対する現在進行中のジェノサイドを防止しなかったことにより、ジェノサイド条約、特に1条に規定された義務に違反し、違反し続けている;
- ドイツは、イスラエルによるジェノサイドの実行に使用される軍事装備を含む援助をイスラエルに提供し、UNRWAが提供する被害者への財政援助を撤回することによって、ジェノサイド条約、特に1条に規定された義務に違反し、違反し続けている;
- ドイツは、……ジュネーブ諸条約の重大な違反……の実行に使用される軍事装備を含む援助を提供すること、UNRWAへの財政援助を撤回することによって、ジュネーブ第4条約1条および人道法の不可侵原則に基づく義務に違反し、違反し続けている;
- ドイツは、イスラエルが人道の基本的考慮の諸規則を尊重することを確保しなかっただけでなく、イスラエルへの援助と支援を提供し、UNRWAへの財政援助を撤回することによって、国際人道法のもとでの義務に違反し、違反し続けている;
- ドイツは、パレスチナ人の自決権を否定し、さらにアパルトヘイト体制の維持と強要を助長するイスラエルへの援助、特に軍事装備の提供によって、自決権の実現のために促進・協力する義務を含む、条約および慣習法上の義務に違反し、違反し続けている;
- ドイツは、戦争犯罪やアパルトヘイトを含む国際法上の重大な犯罪に責任を負う者あるいは告発された者を、そのような者がドイツ国民であるか否かにかかわらず、訴追し、裁判にかけ、処罰することを拒否することによって、国際法に違反し、違反し続けている;
- ドイツは上記の国際義務違反を即時的に中止しなければならない;
- ドイツは、上記の義務違反の再発防止を保障しなければならない;
- ドイツは、その国際違法行為によって生じた被害に対して完全な賠償を行わなければならない。
- 2024年4月8日(🇳🇮ニカラグア)・9日(🇩🇪ドイツ)に、仮保全措置に関する公開弁論が行わる予定(プレスリリース)。
手続
管轄権
紛争の存在
- 紛争の定義:「法または事実の点に関する不一致、すなわち、二つの人格間の法的見解や利害の衝突」
- 客観的要件:一方当事者の請求が他方当事者によって積極的に反対されている(positively opposed by the other)ことが示されなければならない。
- ⚖️ 国際司法裁判所:南西アフリカ事件先決的抗弁判決(1962年)(South West Africa Cases (Ethiopia v. South Africa; Liberia v. South Africa), Preliminary Objections, Judgment of 21 December 1962: I.C.J. Report; 1962, p. 319.)
- 積極的な反対派、必ずしも明示的に(expressis verbis)述べる必要はなく、当事者の立場や態度は、その当事者が公言している見解が何であれ、推論によって立証することができる。
- ⚖️ 国際司法裁判所:カメルーンとナイジェリアの間の大陸および海洋境界事件判決(1998年)(Land and Maritime Boundary between Cameroon and Nigeria, Preliminary Objections, Judgment, I. C. J. Reports 1998, p. 275)
- 主観的要件:被請求者が自らの見解が請求者により積極的に反対されていることを認識していた、または認識しないはずがなかった(was aware, or could not have been unaware)ことが必要。
- ⚖️ 国際司法裁判所:核軍縮交渉義務事件先決的抗弁判決(マーシャル諸島対イギリス)(2016年)(Obligations concerning Negotiations relating to Cessation of the Nuclear Arms Race and to Nuclear Disarmament (Marshall Islands v. United Kingdom), Preliminary Objections, Judgment, I.C.J. Reports 2016, p. 833)
原告適格(被害実体以外の法主体による責任追及)