#アベプラ①キーフ近郊で虐殺か〝戦争犯罪〟プーチン氏に罪は? | 新しい未来のテレビ | ABEMA

2022年4月5日(火)15:30~17:50 | 荻上チキ・Session | TBSラジオ | radiko

☝️4月5日、越智萌先生(立命館大学・国際刑事法など)が長尺でご出演(1週間アーカイブあり)。

ICCへの事態付託

経緯

主任検察官による声明(2月25日)

職権捜査開始の決定(2月28日)

Statement of ICC Prosecutor, Karim A.A. Khan QC, on the Situation in Ukraine: "I have decided to proceed with opening an investigation."

Today, I wish to announce that I have decided to proceed with opening an investigation into the Situation in Ukraine, as rapidly as possible.

Ukraine is not a State Party to the Rome Statute of the International Criminal Court ("ICC" or the "Court"), so cannot itself refer the situation to my Office. But it has twice exercised its prerogatives to legally accept the Court's jurisdiction over alleged crimes under the Rome Statute occurring on its territory, should the Court choose to exercise it. The first declaration lodged by the Government of Ukraine accepted ICC jurisdiction with respect to alleged crimes committed on Ukrainian territory from 21 November 2013 to 22 February 2014. The second declaration extended this time period on an open-ended basis to encompass ongoing alleged crimes committed throughout the territory of Ukraine from 20 February 2014 onwards.

I have reviewed the Office's conclusions arising from the preliminary examination of the Situation in Ukraine, and have confirmed that there is a reasonable basis to proceed with opening an investigation. In particular, I am satisfied that there is a reasonable basis to believe that both alleged war crimes and crimes against humanity have been committed in Ukraine in relation to the events already assessed during the preliminary examination by the Office. Given the expansion of the conflict in recent days, it is my intention that this investigation will also encompass any new alleged crimes falling within the jurisdiction of my Office that are committed by any party to the conflict on any part of the territory of Ukraine.

ICC加盟国41カ国による事態付託(3月1日~)

ギリシャによるマリウポリでの戦争犯罪捜査の要請(4月7日)

4月7日、外相がマリウポリでの戦争犯罪の捜査をICCに要請すると発言

加盟国による捜査協力

国際機構による捜査協力

ICCによる逮捕状発布

https://www.youtube.com/watch?v=FbKhCAaRLfc

2023年3月17日:プーチン大統領・リヴォワ=ベロワ氏

Press Release: 17 March 2023: Situation in Ukraine: ICC judges issue arrest warrants against Vladimir Vladimirovich Putin and Maria Alekseyevna Lvova-Belova

Statement by Prosecutor Karim A. A. Khan KC on the issuance of arrest warrants against President Vladimir Putin and Ms Maria Lvova-Belova, 17 March 2023

2023年3月17日、第2予審裁判部は、ウクライナ事態に関して、ウラジミール・ウラジミロヴィチ・プーチン大統領とマリア・アレクセーエヴナ・リヴォワ=ベロワ氏の2名に対する逮捕状を発布した。

プーチン大統領については、ウクライナ占領地からの人口(子ども)を違法に移送した戦争犯罪(ローマ規程8(2)(a)(vii)条および8(2)(b)(viii)条)に関して、個人刑事責任を負っているとされる。プーチン大統領の責任は、「単独で、他の者と共同して、又は他の者が刑事上の責任を有するか否かにかかわりなく当該他の者を通じて当該犯罪を行う」(ローマ規程25(3)(a)条)、または上官責任(ローマ規程第28(b)条)に根拠づけられる。

マリア・アレクセーエヴナ・リヴォワ=ベロワ氏は、ロシア連邦大統領府の子どもの権利委員会委員であり、ウクライナ占領地からの人口(子ども)を違法に移送した戦争犯罪(ローマ規程8(2)(a)(vii)条および8(2)(b)(viii)条)に関して、個人刑事責任を負っているとされる。リヴォワ=ベロワ氏の責任は、「単独で、他の者と共同して、又は他の者が刑事上の責任を有するか否かにかかわりなく当該他の者を通じて当該犯罪を行う」(ローマ規程25(3)(a)条)に根拠づけられる。

スクリーンショット 2023-03-30 8.43.19.png

2024年3月5日:コビラシュ司令官・ソコロフ司令官

Press Release: Situation in Ukraine: ICC judges issue arrest warrants against Sergei Ivanovich Kobylash and Viktor Nikolayevich Sokolov, 5 March 2024

2024年3月5日、第2予審裁判部は、ウクライナ事態に関して、少なくとも2022年10月10日から少なくとも2023年3月9日までに行われた犯罪の容疑により、セルゲイ・コビラシュ(容疑行為当時の航空宇宙軍長距離航空司令官)とヴィクトル・ソコロフ司令官(容疑行為当時の黒海艦隊司令官)に逮捕状を発付した。

両者ともに、下記の犯罪について個人の刑事責任を負うと信じるに足る合理的な理由がある。

ロシア軍が 2022 年 10 月 10 日からウクライナ各地の電力系を標的に大規模な攻撃を開始したことについて、IICIU 報告書(2023 年 3 月 15 日)は、「攻撃が比例性を欠き、過度な巻き添えの死亡・傷害・損害を引き起こすという戦争犯罪を構成する」と結論づけている。

🗞️Report of the Independent International Commission of Inquiry on Ukraine to the Human Rights Council (A/HRC/52/62), 15 March 2023

2024年6月25日:ショイグ前国防相・ゲラシモフ参謀総長

🗞️ Situation in Ukraine: ICC judges issue arrest warrants against Sergei Kuzhugetovich Shoigu and Valery Vasilyevich Gerasimov, 25 June 2024

2024年6月25日、第2予審裁判部は、ウクライナ事態に関して、少なくとも2022年10月10日から少なくとも2023年3月9日までに行われた犯罪の容疑により、セルゲイ・クズゲトビッチ・ショイグ氏(容疑行為当時のロシア連邦国防相)とヴァレリー・ヴァシリエヴィチ・ゲラシモフ氏(容疑行為当時のロシア連邦軍参謀総長兼国防第一副大臣)に逮捕状を発付した。

両者ともに、下記の犯罪について個人の刑事責任を負うと信じるに足る合理的な理由がある。

ユーロポールとの作業協定

ICC and Europol conclude Working Arrangement to enhance cooperation

2023年4月25日、ICC長官(Piotr Hofmański)と欧州刑事警察機構(ユーロポール)事務局長(Catherine De Bolle)は、ハーグのユーロポール本部で「作業協定」に署名した。 この協定は、ICCとユーロポールが協力関係を構築し、両機関の協力関係を強化し、専門的知識の交換、証拠収集、概況報告、戦略的分析の結果、犯罪捜査手続きに関する情報、犯罪防止方法に関する情報、研修活動への参加、さらには個々の犯罪捜査における助言と支援の提供などを促進するための法的枠組を提供するものである。

Europol's Support to Ukraine: One Year On, Update date: 23 Feb 2023

ロシアによるICC裁判官への逮捕状発布

ロシアは、プーチン大統領とリヴォワ=ベロワ氏に対する逮捕状の発布を受けて、ICCのカリム・カーン検事と3人の判事に対する裁判を開始した。

📖 赤根智子×フィリップ・オステン プーチンに逮捕状を出した日本人裁判官が語る、逮捕の可能性と自身への「指名手配」(『中央公論』2023年10月号)

──7月、ロシア当局は赤根判事を含むICCの判事ら3名をロシア刑法に違反したとして指名手配等にしました。

赤根 ICC全体の業務に関わることなので個人的な意見は差し控えますが、それによってICCの法的業務が阻害されるようなことがあってはなりません。私たちはローマ規程に則った法的・裁判手続きを行いましたし、それはこれからも同じです。なお、ICCの加盟国で構成する締約国会議議長、そして日本を含む関係国が、このようなことがあってはならないと深い懸念を示す非難声明を出したことを付け加えておきます。

オステン 担当判事への指名手配は明らかな報復措置です。ロシアはICCの管轄権を認めていないと言うだけで、嫌疑に対して正面からの反論は一切していない。ある意味でロシア側の無力感を示しているのかもしれません。

担当判事への指名手配のような行為は、国際刑事法廷の歴史上、はじめてのことです。国際社会が一致団結して、ICCだけでなくあらゆる司法機関の構成員に対する報復措置はあってはならない、という明確なメッセージを発信すべきです。国連安保理にはロシアがいるので期待できませんが、国連総会が非難決議を採択することは考えられます。

🗞️ International Criminal Court: Russia urged to withdraw arrest warrants for judges, 13 October 2023

同裁判所とその職員が、いかなる方面からの圧力、干渉、脅迫にも妨げられることなく、ローマ規程の下でその重要な機能を遂行できることが極めて重要である。

ICCでの元ロシア軍人による証言

関連する国際法の論点

加盟国による事態の付託

今回の付託手続について🔻

安保理との関係

安保理は、ICCによる捜査の延期を決定することができる。米国(ICC非加盟国)がアフガニスタン等に派遣した自国兵士を保護するためにこの制度を用いたことはよく知られている。

ロシアもこれに訴える可能性は無きにしも非ずだが、P5のうち少なくとも英仏が拒否権により阻むであろうから、捜査は継続する公算が大きい。

国連総会の役割

国際犯罪への該当性

ロシアによる侵攻とウクライナにおける露宇双方の個々の戦闘行為が国際犯罪に該当し得るのかについては、さしあたり次の国際刑事法専門家の分析を参照。

Core Crimes under Russia-Ukraine War | megumiochi

諸国・国際機関の声明については👇

声明のまとめ(国際人道法・国際犯罪)

戦争犯罪・

【4月4日 HRW】チェルニーヒウ、ハルキウ、キーウでの戦争犯罪の証拠をHuman Rights Watchが確認したと発表。レイプ、即決処刑、文民への暴力、略奪など。

Wikipediaにエントリーが作られている。これに対し、4月5日にロシアが偽情報の流布をやめるよう要求したとのこと(Reuters)。

【5月14日 CNN】ウクライナ検察によれば、ロシアの戦争犯罪容疑、1万1000件以上を捜査中とのこと。

【5月19日】戦争犯罪で初めて起訴されたロシア兵が、有罪を認めた(朝日新聞

ジェノサイド(集団殺害)

上記のような行為がジェノサイド(genocide・集団殺害)にも該当するためには、単に「大量虐殺」が行われたというだけでは足らず、ジェノサイド条約やICC規程の定めるジェノサイドの構成要件を充足する必要がある。特に、「国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団の全部又は一部を破壊する意図」(いわゆる「特別の意図(dolus specialis)」)をもって行われたことが必要である。

なお、「集団殺害」といいつつ、実際に集団の個々の構成員を「殺害」することは必ずしも必要とはされない。例えば子供の強制移送もジェノサイドに当たり得る(ICC規程6条e)。

ジェノサイド認定には高い壁 プーチン氏の責任は法的に問えるか:朝日新聞デジタル

Is Genocide Occurring in Ukraine? An Expert Explainer on Indicators and Assessments

指揮官その他の上官の責任

デジタルオープンソース情報に基づく捜査

リアルタイムで進行する人道に対する犯罪・戦争犯罪を捜査するためには、デジタルオープンソース情報が重要な情報源であるが、誤情報(misinformation)・偽情報(disinformation)が蔓延するなかで、適切な証拠能力のある情報に基づいた捜査が可能かが問われている。

デジタルオープンソース情報に基づく捜査に関しては、Human Rights Center at the University of California, Berkeley, School of Law、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ICC検察局捜査部門部長(Director, Investigations Division)などが共同で作成した指針がある。

Berkeley Protocol on Digital Open Source Investigations: A Practical Guide on the Effective Use of Digital Open Source Information in Investigating Violations of International Criminal, Human Rights and Humanitarian Law

2023年5月24日、ICC主任検察官は、すべての外部利害関係者や証人が主任検察官にオンライン・電子メールベースの証拠を提出するための新しいアプリケーション「OTPLink 」をリリースすると発表した(リンク先)。

ICC Prosecutor Karim A.A. Khan KC announces launch of advanced evidence submission platform: OTPLink

OTPLink は、ローマ規程15 条に基づく事態付託を含む、情報の受信に以前使用されていたさまざまなシステムとプロセスを置き換える、明確な単一アクセスポイントを提供する。

この革新的なアプリケーションは、最新の先進テクノロジーと国際法の使用を融合しており、あらゆるWeb対応デバイスから潜在的な証拠をリアルタイムで提出するためのシームレスで安全な方法をユーザーに提供する。

同アプリケーションの立ち上げにより、影響を受ける地域社会、市民社会、国家当局など、すべての関係者がさらに力を発揮し、関連する事態を裁判所に効果的に、持ち込みローマ規程上の犯罪に対して正義をもたらすことにつながる。

https://www.youtube.com/watch?v=WZjHgYto83s

OTPLinkは、主任裁判官が展開しているプロジェクト・ハーモニー(Project Harmony)の一部として位置づけられる。

https://www.youtube.com/watch?v=rqt63ghnJSE&t=20s

規程当事国による協力義務とのその違反

📜 国際刑事裁判所規程86条(ICC Statute Article 86)

締約国は、この規程に従い、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪について裁判所が行う捜査及び訴追において、裁判所に対し十分に協力する。

📜 国際刑事裁判所規程87条(ICC Statute Article 87)