アントニオ・グテーレス国連事務総長は2022年1月21日声明において、サウジアラビア主導の連合軍がイエメン北西部サアダ市の移民収容所を空爆し、多数の死者と負傷者を出したことを非難した。17日には北イエメンを掌握するフーシ派がサウジアラビア主導の連合軍に加わるUAE(アラブ首長国連邦)にドローン攻撃を加えており、今回の攻撃はそれに対する報復と考えられている。事務総長声明では、軍事活動から生じる危険から市民を保護するための国際人道法(IHL)を遵守することを呼びかけている。

UN Secretary-General condemns Saudi-led coalition airstrikes in Yemen

Saudi-led airstrikes in Yemen kill more than 70 people | DW News

2015年から続くイエメン内戦

2011年 アラブの春(アラブ世界において発生した民主化運動)の余波を受けて、イエメンではサレハ大統領の政権からハーディー副大統領の暫定政権が誕生する。

2015年 フーシ派がクーデターを起こし、ハーディ暫定政権はサウジアラビアの支援を受け脱出。ハーディ暫定政権を支持するサウジアラビア主導のスンニ派連合軍が内戦に介入。これに対して、シーア派イランがクーデターを起こしたフーシ派を支援する形で対立し、代理戦争の構図が生じる。

2021年には2015年に戦闘が始まって以来イエメンでの子どもの死亡・重傷数が1万人に達するという不名誉な節目を迎えるなど(UNICEF発表)、内戦は暴力だけでなく飢餓や病気などを誘発し、あらゆる面で市民の生活を破壊している。

6人のカメラマンが見たイエメン内戦 - 赤十字国際委員会

サウジアラビア主導の連合軍にはアメリカが最大の支援者として関わっており、トランプ前政権はイランへの圧力を強めるためフーシ派をテロ組織に指定した。バイデン政権はサウジアラビアへの軍事協力を停止するとともに、フーシ派をテロ組織指定を解除したが、今回の事態を受けて方針が再転換する可能性が指摘されている。

イエメン内戦に介入するサウジ 支援する米国にも批判

国際人道法の基本原則

事務総長声明では、国際人道法の基本原則として、区別(distinction)原則や、比例性(proportionality)・予防(precaution)原則などが言及されている。

What are the principles of international humanitarian law? - Tutorial video